連鎖

軽石さんが面白いネタを振ってくれました(d:id:KaruishiFactory:20041217)。

掲示板で電子回路設計者への近道はどうすればよいかという質問を見かけた。
(中略)
若者への場合
電子回路設計をやっている会社へ入社する。

電子回路設計者って(その本質は)なんだろうと素朴に思いながらも、次のようにコメントしてみました。

# Chuck 『就職の際にはよく調べないと、仕様書は書くけれど設計をしていない会社(部署)に行ってしまうこともあったりなかったり。』

昨今の状況では、電機メーカーにいっても必ずしも電子回路設計をやっているわけではないらしい、という単純なコメントを発しました。
すると経験豊かな方々からのすばらしいコメントが(d:id:KaruishiFactory:20041217#c)。

# MEG犬 『「学問(幾何学)に王道無し」と言いますが,王道と言うのは下々の者が整備した王様の通る道のことです.「仕様書は書くけれど設計をしていない会社(部署)」に就職するのは,まさに王道ではないでしょうか?設計者の完成形態は仕様書を書くことですからね.』

# raijin 『先生!、物を作ったことの無い人が仕様を作って、まともなものができた試しがないのですが、まだまだ精進が足りない所為でしょうか。(w』

# MEG犬 『raijin先生,僕のことは「MEGコー」とでもお呼びください.一般的に言って,まともなものができないのは下々の者の力不足で,王道ができないからでしょう.』

# moyashi1117 『王道を歩いていたのはハダカの王様。たまに(3・4年に1回くらい)は真の王とよんでもいい王様にあたります。そんな場合は滅私ご奉公させていただきます。おかねもほしいけどね。』

で、いろいろ考えてみました。他人の日記のコメント欄をネタに妄想竹を伸ばしてみましょう。

レイヤーの話

トラブルでもない限り、アプリケーションソフトウェアを書く人がデバイスドライバAPIだけ気にしてその中身には深入りしません。デバイスドライバを書く人はそのハードウェアの構成についてはスルーです。ハードウェア(基板)を書く人はLSIの足と機能を知っていればいいので中身は置いておいて、LSIを書く人は個々のトランジスタの振る舞いまで細かく追う場合は少なくて、トランジスタを敷き詰める人はシリコンベースの作り方まではタッチしないし、シリコンベースを作る人はなぜ地球にシリコンがあるかまで考えることは少ないと思います。
さらに引いて考えると、このハイアラーキにおける真の王様は誰なのか、と考えると楽しくなりますね。あるいは本当にハイアラーキなのか、どうか、とか。

下流工程に関する実力があるとすぐ上の上流工程の品質があがる、というか、layer N の人が layer N-1 の技術と少なくともターミノロジーを理解して仕事を出す(仕様書を書く)場合には、layer N- 1の人からリスペクトを得られる可能性はありますね。少なくともコミュニケーションはスムーズでしょう。豪族型というか「戦争が強いから王様やってる」という正当性かな。

王様が王様でいられる根拠

layer 上がって下剋上、部品メーカーだと思っていたらアプリケーションレイヤーをやっているっていうのもあるようです。5年ほど前に流行った「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」を思い出します*1


ところで、王様だから道路を作ろうなどと言い出すのであって、下々からその発想が出てくることはありえません。出来上がった道路がイマイチだったらやはり下々の努力が足りないのでしょう。
と、ちょっと前までならこのように単純でした。王様だけに情報が集まって、道路整備状況から道路を作ろうと言い出すのは王様だけだったわけです。ところが昨今は道路の整備状況を下々のものでもわかってしまう。王様の整備計画を云々されるわけだからたまったものではありません。下々の者も「こんな整備計画だめだよな」とか云いながら下働きをするものですから、集中が足りません。いきおいモチベーションとともに品質は下がります。なんとも難しい世の中です。
あるいは知らないというのがハッピーなのかもしれないと思ったり思わなかったり*2

道なき道を行く

以前は道なき道を進んで道路を作った、というような仕事をしたことがあります。それは楽しいことであります。最近は壊れかけの道路を直したり、橋を架け替えたりというような仕事が多く、いまひとつ満足度が低いです。
また道を切り開いていくような仕事をしたいものです、待て待て、今だと空を飛ぶ必要があるかもしれません。


我ながら歯に物が詰まったような言い方ですな…

*1:微妙に違うけど。

*2:はっきりしませんな。